5、コストダウンのパターンを考える

コストダウンとは、一言で言えば損益分岐点売上を下げることを意味します。損益分岐点売上を下げることによって、

・たとえ売上が下がっても一定の利益を確保できます
・売上が現状以上なら利益の大幅増を達成することが出来ます

1)変動費(率)を改善する

変動費(率)の改善は限界利益(率)の改善と裏表の関係にあります。この限界利益(売上―変動費)が利益を生む源泉になります。

図2(損益分岐点)をご覧ください。

変動費の改善に成功して変動費率が下がると、変動費の線は傾斜がゆるくなって売上高と交わる損益分岐点は左に移動します(A新・損益分岐点)。つまり左に移動した分だけ売上が少なくても赤字にはならないことを意味しています。

反対に、材料費の値上げや売価の低下などで変動費率が上がると損益分岐点は右に移動して、移動した分だけ売上が増加しないと赤字に転落することになります。また、限界利益(率)がゼロ以下であれば永久に黒字になることはありません。価格を決めるときに重要な点です。

このように変動費が利益を生む源泉であることを考えるとコストダウンの第1は“変動費率の改善”であることは容易に理解できます。

そこで、何を変動費と考えるかということが問題になります。製造に比例する費目といえば会社によって多少の違いはありますが、材料費のように比例度の高いものと、光熱費のように機械設備の稼動にかかわる一部が比例的でその他は固定的なものもあります。

通常は、複雑な作業を省略するために比例度の高い主要な変動費を捉らえて比例度の低い費「目は無視して考えるのが実務的です。但し無視した分は損益分岐点売上が低めになるので、その分必要限界利益率を高めに設定する必要があります。

そう考えると、通常、変動費には「材料費」「外注加工費」、機械設備の多い加工業では「消耗工具費」などが該当します。

2)固定費(率)を改善する

固定費の削減も損益分岐点売上を下げる効果があります(図2)。

固定費の削減といえば、一般に人員整理(俗称リストラ)や不採算事業からの撤退などが上げられます。但し、短期的に且つ即効性を考えるとそうですが、中長期的に考えると別の視点が浮かんできます。

生産性の向上の意味を一言で言えば、固定費を据え置いて改善を進め、同じ人と設備でより多くの生産が出来るようにすることです。勿論一朝一夕には出来ませんが、活動を重ねて同じ人と設備で2倍の生産が出来るようになるとすれば、固定比率は1/2になる理屈です。

販売増が期待できるときは、この生産性向上の効果を狙う絶好のチャンスでもあります。

まとめ

1、原価=「変動費」+「固定費」
2、損益分岐点を理解すれば、幅広いコストダウンの着想が得られる

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『生産性向上はこうする』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。