第3章 いかにして人を資産化するか

社員の能力開発は誰が行うのか

いかに時間を捻出し人を資産として育てるか、ということをテーマにこれまで考えてきましたが、その場合、企業はどこまで役割を担うべきかを確認しておく必要があります。業務命令ではなく、社員が自発的に時間をつくり自分磨きを行うことがあるからです。

どちらかといえば、本人の能力は本人が磨くものとして企業はあまり関与しないという時代が長く続きました。かつてソニーの盛田昭夫社長が、企業内教育について次のような言葉を述べています。

わが社は学校ではないので 社員を育てることに注意を払う必要はない 落伍者は残念だが おいていく。(※注)

自分の能力には自分で責任を持つ。ずいぶん厳しい時代でもありました。しかし、社会が複雑化する中、企業に要求されるものは多様化し、企業が個人に求める能力も高度になっています。そのため社員が独自に自己啓発を行うだけでは十分ではありません。

次頁に厚生労働省が2013(平成25)年度に行った能力開発基本調査の結果があります。

正社員を教育するときの責任主体について調査したものです。企業主体で決定すると答えた企業が23%、企業主体で決定するに近いと答えた企業が52%、つまり75%が企業の関与が大事であると考えています。企業と社員が力を合わせて能力を開発しなければならない時代を迎えているのです。

[図1]能力開発の主体責任