2007年

レストランでの食事

アペリティフ、前菜、メイン、デザート、コーヒーというのが普通のフランス料理のコースであることは知られている。
レストランに行って周囲のフランス人の食事風景を見るとまずはこんな風である。

席に案内されるとおもむろにメニューをながめる。これがいいか、あれがいいかゆっくりと選ぶ。

ボーイは客の様子を見ていてそろそろかなと思ったところでやってくる。「すみません。注文お願いします!」などと大声で呼んではいけないのだ。

注文をとりに来たらまずアペリティフを頼む。別にアペリティフをスキップしてもかまわない。それが来たところで前菜とメインを頼む。ここでも前菜をスキップしていきなりメインでもかまわない。

デザートは普通後で聞きに来る。注文後はアペリティフを飲みながら料理が出てくるのを待つ。料理がなかなか出てこないからと言って焦ってはいけない。

「おねえさん、注文した料理まだなんだけど」などと言わず、ゆったりとおしゃべりをしながら待つのである。それも料理を味わう時間のうちであるかのように。

さて前菜が出てきた。何人かでテーブルについている場合、全員の注文した料理が運ばれてくるまで待っていなければならない。
たとえ先に自分の料理が目の前に出されても「では、お先に」などと言って食べ始めてはいけないのである。

全員の料理が揃って、ようやく食べられる。そのころにはアペリティフを飲み終えるので、ボーイが飲み物の注文は何にしましょうかと聞きにくる。

ワインリストを見せてくださいと頼む。そこでまたまたあれがいいか、これがいいかとなる。お奨めワインは何?などと店員と会話する。

全員が前菜を食べ終えると皿を取り替えに来る。一人でも前菜が食べ終わらなければ次のメインは出てこない。

いよいよメイン料理であるが、ここも焦らずおしゃべり、おしゃべりそしてまたおしゃべり、全員の料理がくるまで待つ。配膳の順番は女性が先。全員の分が揃ってから、ワインを飲み、おしゃべりをしながらこれまたゆっくりと食べる。

ここまでで一時間は優に越えている。ふぅ〜。

メインを食べ終わると、デザートは何にしましょうかと聞きにくる。またまたメニューを見ながらあれがいいか、いやこれがいいかとゆっくり選ぶ。何せフランス人はデザートを食べないと食事が終わった気がしないというくらいだから、デザート選びも重要なのである。

会社のあるフランス人が日本に出張に行ったとき、日本のレストランではデザートが出てこないので、仕方なくコンビニでデザートを探すしかなかったと嘆いていた。

こうしてまたまたデザートが出てくるまで待つ。やれやれ。

デザートが終わると、飲み物は何にしますかとまたまた聞きにくる。なかなか終わりにしてくれない。私はコーヒー、私はティーとそれぞれ注文し、出てきたのを飲んでようやく本日の夕食が終了となるのであった。

「ムッシュー、お勘定」というと計算書を持ってくるまでここでも待つ。席でカードか小切手・現金で支払う。
チップはそのときの気分によりけりでOKだ。

ちなみに私はほとんど払ったことがない。高級なレストランに行ったことがないからである。時計を見るとすでに夜の十一時である。夜八時に席についてから三時間が経っている。

こんな風であるから食事に関して気が短い人はフランスでは暮らせないだろう。

※本記事は、2018年10月刊行の書籍『ブルターニュ残照』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。