着任後最初の役員会議である。

それまでの役員会は九時開始だったそうだが、高倉が着任後にあえて七時からに変更したものである。

役員会メンバー全員が既に揃っており、楕円形のテーブルを囲んで、これから報告すべき、それぞれの業績を読み込んでいる。

黒人対策として設立している子会社のブラック・グリップ社(BG社)社長であるポロ・マルハン以外は全員白人である。

新社長がどんなポリシーを打ち出すのか興味津々の反面、日本人社長だからくみしやすいと考えているのか、緊張した感じは見られない。

役員たちの他に、今回は特別にモザンビークを含む周辺国担当マネージャーであるシェーン・ネッスルが秋山の事前手配により急遽出席している。

秋山は役員ではないので、当会議には出席していないが、次回からは社長室長として出席させることを高倉は計画していた。

司会役はカンパニー・セクレタリーのアンドルー・レクレアである。

「それでは二〇〇四年二月度の役員会を開始します。いつもの通り、先ず各部門の長より、二〇〇四年一月度単月、下期十月から一月の累積、二月度見込みを報告願います」と、切り出した。

各々のメンバーとは着任後すでに面談しているので、高倉の自己紹介は省いていきなり議題に入った。

営業、技術、生産、経理、財務、管理、それぞれの部門長が業績を報告した。

売上げ、利益ともに対前年割れ、且つ予算未達という結果だが、役員たちは何事もなかったかの如く淡々と報告する。

高倉は怒りが沸々と湧き上がるのを覚えたがぐっと抑えて、あえて静かに、

「私は着任したばかりだから数字面だけで見るが、昨年、一昨年から現在までの会社全体の業績は、売上げ減、粗利低下、経費増の傾向が顕著で、結果としてボトムで赤字が続いている。南アフリカ以外の周辺国ビジネスは特に問題だ。それに黒人の地位向上対策として設立した子会社のブラック・グリップ社(BG社)も赤字続きだ。早急に何とかしなければならないが、あなた達の報告にはその危機感が全く見られない」

と、報告に対するまとめのコメントを述べ、更に続けた。

「手を打つべき課題が山積だ。その中でも緊急に解決すべき案件はモザンビークのマドールタイヤ不良債権問題と認識する。今日は先ずこの件に絞って討議したい。シェーン、この経緯を説明してくれ」

いきなり具体的個別案件の討議に入った。

名指しされた周辺国担当マネージャーのシェーン・ネッスルはもちろんのこと、出席メンバー全員が面食らってポカンとしている。

シェーンの報告は、土曜日夜の秋山の説明とほぼ合致するものであった。

「それで、何が問題ですか?」

シェーンは高倉に向かって聞いた。全く問題意識がない。