「あーグヤジイー」

それで如何(どう)しただと?

チャックを上げた時に、暑さで伸び切っていた、キンタマの袋がチャックに挟まったのだ。どうだ分かったか、この野郎!

とにかく痛さの原因は分かった。分かったからと言って、そのまま放ってはおけぬ、玉袋をチャックから外さねばならぬ。それにはもう一度、あの挟まった袋の上をチャックの金具を通さなければならぬ。思うだけでも恐ろしい。

チャックを少し下ろしてみたが痛い。
チャックを壊すか? ……不可能だ、Y●Kのバカ!
早くしないと患部が腫(は)れて取れなくなる。

上がったものは下がるだろう。決断した。
下を見ないように、鋭く天を睨(にら)み上げた。

「南無さん、タマタマの皮よ外れてくれ。……一、二の~エイヤー」
「ギヤーッ」

大声を出す方が、いくらか痛さが分散する。

そーっと下を見る……外れているが……タマがない……エーッ玉がない。

あれほどデレーと伸びていたのに、手で探ると、四分の一ほどに縮み上がって上の方に隠れている。

タマタマには自己防御本能がある。暑いからといって、油断して伸びていると、またチャックに挟まれるかもしれない、だから怖がって自分から縮み上がっているのだ。可愛い奴メ。

どうだ、こんなこと知ってるか?

……あーあ、それにしても痛かったナー。
チャックに金玉の皮挟むなんて! どうかしているよ、全く。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『お色気釣随筆 色は匂えど釣りぬるを』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。