第1章 本書の重要事項

重要事項10 理解について

理解とは、知識により説明されることにより得ることができるものです。
例えば、ある現象が知識としての物理法則で説明できれば、その現象は理解できたということになります。

知識は先天的な知識と後天的な知識の算術的な和により形成されています。又、知識の上に思考を重ねて得た仮説が実験や観測などにより正しいと確認されれば、新しい知識となります。知識はこのようにして、人間界に蓄積されて行きます。

蓄積された人類の知識は書物や教育等を通して伝達されています。時には、これら他者により形成された知識をそのまま確固たる個の知識としていることがあります。

しかし、他者からの知識は鵜呑みにするのではなく自身で吟味・評価した上で己の知識としなければなりません。そうしたところで、正しい知識かどうかを保証するために十分ではないかもしれませんが、正しい知識を身に着けようとする姿勢を持ち続けることは大切です。

然るに、この知識を通しての理解ということについては、少なくても、2つの観点から良く考えておかなければならないことがあります。

その1つは、知識で説明できず理解できないことを超自然現象だとか奇跡だとか神秘だとか不思議などとは思わないことです。なぜなら、既知なるものは有限ですが、未知・未解は無限にありますから、知識で説明できないからと言って驚くにはあたらないからです。

その場合は、採用している物理法則が間違っているかその他の知識が十分でないことが明らかなのです。現象はそれ自体起こるべき解をもって起こっているのですから。(→現象の原理)

後の1つは、前項でも触れておりますが、知識で説明できたとしても、人間の知るべきことは、それで十分であることにはならないということです。なぜなら、例えば、知識としての物理法則は起こっている現象のメカニズムを良く説明できても、それはそうなっていることを説明しているだけであって、なぜそのようにあるのかを説明するものではないからです。