このような重要な出来事を大学が教えていないのは、理解ができません。バブルの様相を呈していた昭和~平成景気は、1986年11月から1991年2月まで拡大し、日経平均株価は1989年12月29日に3万8915円87銭と史上最高値をつけました。その後一転し、1991年2月から急落し、1998年10月9日には、最高値から実に67%下落の1万2879円97銭となりました。

それまでの日本では、土地を買えば、だれでも儲かる土地神話がありました。早く買ったものが勝つ。鮮明に覚えていることがあります。

当時、東京のあるホテルで銀行の支店長と昼食をとりました。

「午前中に取引先から50億円の土地売却の依頼があり、先ほど100億円でまとまった」というのです。得意満面にお話しされていました。バブル崩壊で、土地神話はあっけなく崩壊し、支店長の銀行も姿を消しました。

司馬遼太郎氏はそのときの土地バブルについて、こんな言葉を残しています。「バブルを見逃したのは、まぎれもなくわれわれ全体です。土地バブルに狂奔する日本人を評して『日本人をやめたくなった』」と。

モラルの崩壊は、日本の歴史上、空前絶後でした。私はバブル崩壊後、大手町にある大手銀行、保険会社のコンサルティングをしてきましたが、20行以上あった都市銀行のほとんどがなくなり、保険会社もわずかしか生き残ることができませんでした。

いま、オレオレ詐欺やルールを守らない日本人が増えてきましたが、バブル時の日本人のモラル崩壊は、ひどいものでした。バブル崩壊は日本社会にどんな影響を与えたか計りしれません。

しかし、日本人は分析と反省をしないまま今日にいたっていると思います。したがって、世代を超えて、悪い影響を残しています。

日本はまだバブルの清算をしていません。いつかきっと、この清算をしなければならないときがきます。今回の新型コロナが、日本の弱点を炙り出す可能性があります。

バブル崩壊後、1992年11月日本政府は「生活大国5か年計画」を発表し、計画期間中に年間総労働時間1800時間を達成する目標を掲げました。これに対して、産業界から大きな反発がでました。私も虎ノ門で、「これから日本はどうなるのか」について講演をしました。

私は、国を挙げて「働くことをやめよう、みんなで楽しい生活をしよう」と、国策として方針を決めたことを危惧しました。バブルの分析と反省をしないまま、労働時間だけ減らして果たして日本はやっていけるのかという疑問があったからです。

以来、日本は次の戦略を構築することなく、労働時間を減らし、国際競争力が急速に低下しました。みなさんご承知のとおりです。2019年にはじまった働き方改革も、日本の企業文化を変えることなく労働時間だけを減らしていくことになれば、1992年の生活大国5か年計画と同様に表層的な改革に上滑りし、日本の活力を失うことになってしまいます。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『ワークスタイル・ルネッサンスがはじまる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。