発見の年齢がどんどん上がる

このようにうまく生活できなかった子どもたちも、大きくなって大人になります。しかし子どもの時に不都合を感じていた子どもたちや親は、医療機関や相談機関につながる機会もあったでしょう。そして自分にはこういう特徴、障害があるのだなと理解に至ることも多かったかもしれません。

しかし子どもの時は特に問題がなく、学校生活も特に支障なく過ごし、むしろ成績はよかったかもしれない子どもたちが、就職してのちうまく仕事ができない、職場の集団にいられない、そのような状態が見うけられるようになります。「空気が読めない」など対人関係の違和感が表現され、アスペルガー症候群という言葉も浸透する中で、2000年以降、多く聞かれるようになります。

そして「大人の発達障害」と言われるようになりました。成人になってから、発見されるのです。いまでは成人になってから発症したのではないと理解されていますし、「大人の発達障害」は「大人になってからわかった」というのが定説です。

本書のテーマはこの最後に発見された発達障害に関することですが、なぜ働いてから問題になるのでしょう、逆になぜ働くまでは問題とならないのでしょう、何が問題でどういう問題なのでしょう。

発達障害自体、コアだった概念と対象が、どんどん拡散されている印象があります。果たしてこれがどういうことなのか後世にならないとはっきりしないとは思いますが、実際に困っていたり精神的に病んだりしていることは事実です。