草の根を岩根をつかみ尋ぬれば
奥山にかかる滝のとどろき
人を見て鳴きつのる猿はらはらと
梢の団栗ゆすり落とせり
そよぎたつ青田の果てに鳥海山
斑の雪を被きかがやく
※本記事は、2019年9月刊行の書籍『歌集 秋津島逍遥』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。
歌集 秋津島逍遥【第30回】
“忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す”
――日本の面白さに旅装を解く暇もない
最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。
尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。
草の根を岩根をつかみ尋ぬれば
奥山にかかる滝のとどろき
人を見て鳴きつのる猿はらはらと
梢の団栗ゆすり落とせり
そよぎたつ青田の果てに鳥海山
斑の雪を被きかがやく
男鹿半島 水田の広がりを寒風山(海抜三五五メートル)から見渡すことができる。男鹿(おが)海岸には男鹿温泉郷があり、突端の入道崎を北緯四〇度線が横切っている。