吉田学医政局長答弁
「今回の通知については、従来の解釈あるいは従来の私どもの法第21条について申し上げていることについて何ら変わることもなく、同趣旨を改めて確認させていただいた。……厚労省としては、医師法第21条に基づく届出の基準について、全ての場合に適用し得る一律の基準を示すことが難しいということから、個々の状況に応じて死体を検案した医師が届出の要否を個別に判断するものというふうにまず考えている。そういう意味で、本年二月の医事課長通知においては、異状死体の届出の基準そのものではなくて、医師が異状を認めるか否かを判断する際に考慮すべき事項という点について改めて示したものである」

医療現場の冷静な対応を求めた

二〇一九年(平成三十一年)三月十四日開催された、医療法務研究協会主催の「医師法21条に関する懇談会」において、佐々木健医事課長から前記衆議院厚労委員会質疑応答と同一の発言があり、今回の通知は、東京都立広尾病院事件判決および従来の厚労省見解と全く変わっていないことが確認された。これらの確認を受け、私は、医療崩壊を回避すべく、医療現場に従来通り冷静に対応するよう求めた。

医療法務研究協会主催「医師法21条に関する懇談会」

一連の騒動の収拾のために、まず行ったのが医療法務研究協会主催の「医師法21条に関する懇談会」の開催である。事態収拾のきっかけとなった重要な懇談会なので、第6章(1)に、その議事録を掲載する。

医師法第21条についての呼びかけは応急処置であった

これらの対応は、医師法第21条に関する突発的でとんでもない医事課長通知発表に対して採った応急処置であった。虫の知らせと偶然とが重なり、幸運にも二月八日付け通知を私は、ほぼ、発出と同時に把握できた。たまたま上京予定もあったので、直ちに対応を開始した。

確定したはずの、医師法第21条の根幹である『外表異状』の解釈に急に衝撃が襲った。突然のことであり、状況把握に手間取ったが、応急処置として、積極的に発信しながら全貌の把握に努めた。全体像が明らかになって来るとともに、いろんな方々の協力が得られ、医師法第21条の解釈は、完全に従来の考えに戻って行ったのである。医療事故調査制度の前提として、医師法第21条の理解と解決が如何に重要であるかを本書で再度検討しておきたいと思う。