さらに心筋梗塞が軽快して退院された方が幾ばくもなく再発悪化して亡くなられたことをきっかけに、化石医師の興味は消化器に移りました。とは言え臨床医にとり患者さんの聴診は大切です。化石医師も沢山の患者さんを聴診していく中で、聴診器のばねが折れ今まで何本も買い換えています。

そんな風に聴診を大事にしてきましたが、化石医師が専門に取り組んでいた頃はあまりお年寄りの弁膜症は多くなかったように思います。

弁膜症と言えば先天的な弁の異常と言っても過言ではないような時代であったと思います。しかし最近は診察する高齢者の方々の心臓雑音が随分増えているように感じます。文献的に調べてみますとやはり高齢者の方々の弁膜症が増加しています。それも大動脈弁の狭窄症が多い。私が感じたことと合致していました。

心臓が全身に血液を送り出そうとする時に大動脈弁の狭窄があれば、当然心臓に負荷がかかります。通常以上に強い収縮力で血液を送り出さないといけません。その状態が長期に続けば心臓は肥大しやがて疲弊します。高齢者の心不全の一因になっています。

74歳のMさんは原因不明の貧血のため当院を紹介され受診しました。聴診で心臓雑音がありました。貧血のための雑音かと思いましたが、調べると大動脈弁狭窄症がありました。

弁膜症の手術を行いその後貧血も改善しました。血液が狭窄した弁にぶつかり破壊された結果、貧血を生じていたようです。

最近聴診器を持たない医師が増えています。でも1本の聴診器で様々な疾患の診断が可能です。心臓疾患ばかりでなく呼吸器疾患、さらに腹部の腸蠕動音の聴診は基本です。様々な検査手段の発達した今日ですが、基本である聴診は大切にしたいものです。もちろん聴診器のイヤーピースの間の訓練も大切です。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『新・健康夜咄』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。