二月二十七日(土)

昨夜の嫌な予感が当たってしまった。

「肩の痛み、どうしたら治る……。母ちゃん、ヨシ子、肩が痛いのよ。どうしたらいい、母ちゃん教えて……」

母はまた白昼夢を見ているようだ。
咄嗟にどうして良いか分からず、リラックスさせるべく頭と肩のマッサージをしてあげているうちに、つい涙があふれ出てきた。

「アキちゃん、ありがとう……。泣かせてごめんね……」
そう言った母も泣いている……。

しばらくして落ち着くと、「カズちゃんの仕事どうなってんの……」と、最近また転職をした兄の事を気にかける。ようやく、こっちに戻ってきてくれた。

兄に電話をした……。

「調子はどうだい」
兄の声がもれ聞こえる。

「調子良くないよ。頭が痛いのよ」
「頭、痛いのか」
「痛くないのよ」
「時々痛いのか」
「うーん……、はてなー」
「お母さん、大丈夫か、意識ははっきりしてる……?」
「意識……、はっきりしているよ、ハハハハ」

昨日の帰り際、もし本当に、母は私と一緒に何処かの宿に泊まっていると思っていたのだとしたら、その母を一人残して帰ってきてしまったのがいけなかったのかも知れない。それで今日、母はこんなに混乱してしまったのではないだろうか……。母と兄のやりとりを聞きながら、そんな事を考えていた。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『ありがとうをもう一度』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。