球体

「主観」と「客観」の違いを
自分は単純に
ひとつの球体を内側から見る視点と
外側から見る視点の違いと考えていた

つまり
ある人を取り囲む環境全体を
ひとつの球体と考え
それを内側から見ている視点を「主観」
外側から見ている視点を「客観」
と考えていた

そして
例えば
私たちが宇宙を見る視点について言うと
近代科学が地球や宇宙を外側から見る視点を
私たちの思考ベースに根付かせてしまったので
太古の人々が見ていたような「主観」的な宇宙を
見ることはもう不可能なのだと考えていた

同時にまた
私たちが現在置かれている世界を見る視点についても
SNSで私生活を公開することによって
生きていることを初めて確認するような
外側からの視点にあくまで重心をおいたライフスタイルや
ネットの掲示板などによる世間の目を
異様に気にせずにいられない風潮の中で
純粋に「主観」的に世界を見たり
単純に「主観」的にこの社会を生きるということは
もはや完璧に不可能になりつつあるのだと思っていた

だが
それは少し違っていたのだ……

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『静寂の梢』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。