「フーム、結構高額だが戻ってはこないだろうな。いずれにせよ、ATMで金をおろすときに周りに気を配らなかったこと、銃を突きつけられているのに抵抗したことはまずかったな」

黒人ポリスはいかにもチーフの方が悪いような言い方をした。

高倉が、あんな言い方はないな、と思っていると、案の定ピートが、
「悪いのはチーフではなくて強盗の方だろう」
とポリスに食ってかかったので、アンドルーがピートを制した。

「おまえらに何も言う資格はないぞ。ファッキンカラード(くそカラード)、ファックユー(くそ野郎)」

黒人ポリスは汚い言葉を吐いてその場を去った。

「やっぱり黒人はカラードをバカにしてますね。それにしても確かに不注意が重なっています。まずATMでお金をおろすとき、門を開けて入るとき、それから銃を向けられたときの三回です。強盗が銃を突きつけるのは脅しじゃありません。抵抗したら発砲しますから絶対に抵抗してはならないのです」

アンドルーがいう警鐘の言葉に、

「そのことを全社員に徹底したい。それから直営販売店や倉庫が武装強盗に襲われてタイヤやホイールを持って行かれたことが過去にあるし、これからもあるかもしれない。そんなときに絶対に抵抗しないように再確認する必要がある。アンドルー、全社員にもう一度行動マニュアルを送って、安全行動を徹底してくれ」

高倉はそう指示し、そして呟いた。

「黒人地位向上を目指して躍起になっているそばから、こういうことをやって、自分たちで自分たちの首を絞めている。貧困ゆえのことだろうが愚かだ」