第2章 人生における五つの重要事実と心の法則

2 心の状態

(2)時間の使い方と資本・果実バランスの維持

前述の「現在に集中する」ことに関連して、幸せな人生を送るために、どのような「時間の使い方」が理想的なものであろうか。

それは、価値適合性や目的適合性という観点から、図1のように、自分の価値観や目的観のために重要なものを優先するという「重要性の原則」を守るという生き方である。

ここでの重要性は、社会的な側面においては、自分に与えられた職務に対する重要性を考えると共に、私的な側面においては、自分の夢の実現にとっての重要性を考えて生活する、ということである。

すなわち、後者の私的な側面に照らしていえば、自分が夢を実現しながら幸せに生きるという果実を得るために必要な、その元手(資本)となる自己の能力を普段の生活において磨き続けるために、時間を使うことである(「能力開発への投資」)。

人生においては、時間は限られているので、時間を使う項目について、価値判断として選択と集中を行うことである。つまり、より重要性の高い項目により多くの時間を投入し、日々自己の進化向上を目指したい。

[図1]時間の使い方:選択と集中

(3)心や人間性の向上

上述の心の状態や使い方と共に、その前提として、稲盛和夫が常に力説するように、自己の「心や人間性を高める」ことが大切である。すなわち、心や人間性は、お金で自由に買えるような物質的・経済的なものではなく、もっと崇高な精神的なものであり、心が浄化され、美しいことが大切である。

この心を高めるためには、「心の栄養」として、例えば、世界偉人伝などのような良質の思想や哲学などの本を多く読むことや、多くの立派な人達と出会うことである。

また、自分自身も他者から信頼され、尊敬されるような魅力のある人格や徳性を身につけるように常に努力し続けることである。そして、この徳性は、幸せな人生を送るための土台となる。