ええーい、こうなったら言ってしまえ、こんなこともあったゾ。

釣友諸兄は日焼け止めはどうしておるな。

晩秋から早春にかけての頃は、暖(あたた)かい日差しは快(こころよ)いものだが、日焼けは困る。若い頃と違って、一度焼けたらなかなか元に戻らぬ。ダンディーを旨とする吾輩は、軽く日焼け止めクリームを使っておる。

その日はまだ日の高い秋口で、特別陽光が強かった。竿袋の中にあった少し古い「日焼け止め」を多めに付けた。脇を見ると釣友は既に竿を出している。

はやる心を抑えて、ゆっくりと小用をした。
開放されたひと時、これぞ男子の本懐だ。
眼前には大海原が開け、空はどこまでも青く果てしない。

「この世をばわが世とぞ思う望月の欠けたることもなしと思えば」。
まさに藤原道長の心境もかくありなん。

かくの如く慌てず、騒がず、粛々(しゅくしゅく)と釣りに臨(のぞ)むのが吾輩のスタイルである。

二時間ほど釣りをした頃からナニの先がヒリヒリする。
帰りのフェリーのトイレで覗いたら、赤く腫(は)れて痒(かゆ)い。
風呂からあがって観察すると、ややピンク色、久しくこんな可憐なソレを見たことがない。

「痒いところにマキュ●ーン♪」てな調子でいたが、思い当たる節がない。
布団の中でボリボリやっていたら、女房が、
「どうしたの」
「チンコが腫れてカユイ」

「どうしたの、見せなさい。
マア、可愛らしい。
火に焙あぶったソーセージみたい。
オロナ●ンでも付ける?
メンソレー●ムの方がいいかしら。
キャー、メン●ムが染みるーッ」

団扇(うちわ)で扇(あお)いだり、氷で冷やしたり、最後はベビーパウダーをパタパタはたいて、まっ白。

顔にまで発疹(ほっしん)が出て、翌日皮膚科に行って治ったが、原因は安物の日焼け止めクリームの変質だった。

たっぷり顔に塗り、その手で立ちションしたのが失敗だった。

哀れなるかな我が愚息、お前にとんだとばっちり、赤くなったり白くなったり、今やすっかりしょげ返り、一人で悩むな息子じゃないか、親より先に歳とるな。

あーあヤンなっちゃうな。

足のギプスはいつ取れる、石膏(せっこう)巻きで極太(ごくぶと)で、用もないのにカチンカチン、息子に付けたギプスなら、何か使い道のあるものを。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『お色気釣随筆 色は匂えど釣りぬるを』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。