2)機会

“機会”とは、不正行為を実行できる環境のことです。例えば、データ改ざんの例では、1人だけでデータを取り扱っていて“他の者に見つからないという状況”のことです。他には「当人がその行為を行っても、罪に問われないだろう」と考える場合も該当します。

また、複数名の職場であっても、“その不正行為に関して誰も異議を唱えることができない”、もしくは“不正行為自体を誰もが疑問に思わない環境ができてしまっている”ような状況も含まれます。つまり自分が行った行動に対して、“自分が見つかる”、“自分が罰せられる”、“不正そのものが見つかる”などの、当人にとってのマイナスのリスクが限りなく低い場合を言います。

3)正当化

“正当化”とは、不正行為の実行を自身で容認することです。自分勝手な理屈をつけて、自分の心の中で不正行為を肯定してしまう。

例えば、企業において、「自分が製品の検定で合格を出さなければ、製品の納入が遅れ取引先や自社にも大きなマイナスが生じる。データ的にはわずかな逸脱なので、特にそれは問題だとは思えない」とか、犯罪においては「いまここで盗みをしなければ、自分は生きられない。これは生きるためには必要な行為だ」などのように身勝手な言い訳が“正当化”にあたります。

“不正リスクの3要素”この3つが揃うことで、人は不正行動に理由付けをし、見つかるという恐怖を振り払い、自分自身に釈明することができます。そうすることにより“善意の心”を断ち切るのです。

そんな不正を行う人の心の底には、その人の心境を大きく変化させる“何か”が、必ずあるはずです。リスクテイキング行動を防止する対策を考えるためには、“どのような状況が、そんなにまで人の心を変化させたのか”、その“何か”を探る必要があります。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『 ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。