無事是名馬

中村:トレーニングも大事ですが、同じくらい食事面も重要ですよね?

溝口:もちろんです。まずはスポーツ選手、アスリートの食事から話しましょうか。昨今の傾向として、筋肉をつけるための食事、記録を出すための食事、疲労を取るための食事、大体この三つが柱になっています。ただし、栄養士レベルでは、個体差をあまり考慮していないため、十分とは言い難いですね。

この先アスリートも一般の人も基礎医学に直結した分子レベルの栄養学が当然のように必要となってきます。速く走らせる、速く投げさせる、バランスを良くする、体幹を強くする、筋肉をつける、疲労を早く回復させるなど、いろんな目的や用途にちなんだ食事指導をすることはいいことです。実際、多くのアスリートはそれを望んでいるのですから。

しかし、今後は分子生物細胞学、発生学、生化学など、これらの基礎医学の上に成り立った分子栄養学で食事面、栄養面を考えていく必要があります。でも、そういった指導ができる指導者は残念ながら少ないというのが現状です。

では、何をモチベーションとして現在の指導者やアスリートがやっているかというと、筋肉の成長(肥大)、記録・数値のアップ、肉体のシルエットの変化などです。しかしそこには、将来的な予防医学に即した体作りというものが存在していません。

現に、なぜスポーツ選手の寿命は短いのでしょうか? 肉体の権化、プロレスラーや格闘家の平均寿命はおそらく70歳未満でしょう。力士の場合、たとえば横綱の平均寿命は55~60歳ぐらいだと思います。ボディビルダーは? ボクサーは? マラソンランナーは? スポーツ選手の寿命は一般の人に比べると短いですね。

中村:どうしてでしょうか?

溝口:体を作る上で、筋肉をつける、記録を伸ばす、体を大きくするといったものが中心になっているからです。もっと、体作りのモチベーションの中に「予防医学」というエッセンスを含めていかないと。そういった中でタンパク質の摂取は非常に大切です。筋肉をつける、記録を伸ばす、体を大きくするなどといったアスリートや指導者側から見て、やはりその頂点に位置するものはプロテインという存在です。