第1章 医療

ノロウイルス

宮城県に住む友人から今年も生牡蠣が送られて来ました。荷を開けて見て

「あれっ?」

例年は「生食用」の牡蠣でしたが今年に限って「加熱用」になっています。

「宮城県産の牡蠣は安全だから」と友人は生牡蠣が好きな化石医師のために、毎年生食用の生牡蠣を送ってくれます。でも今年は「加熱用」です。何かあったのか。その答えは翌日の報道にありました。なんと宮城県の牡蠣が大量にノロウイルスに感染し加熱用も含めて出荷を停止したとありました。まさに1日違いでした。人からのノロウイルスが大量に海に流れ込み牡蠣が汚染されたそうで、2006年、2010年にも同様なことがあったが今年が一番ひどいとの報道でした。

例年冬になると流行するノロウイルス感染ですが、今年は全国的に感染が流行しているようです。化石医師の勤務する病院関連の老人保健施設でも感染が流行してしまいました。入所者およびスタッフが何人も感染したのです。そのため感染の拡大を防ぐため一時入退所が停止となり、施設が機能しなくなってしまいました。

一般にノロウイルスにしてもインフルエンザにしても、一人だけで暮らしている、外部との接触を持たない、予防を徹底すれば感染の危険は少なくなります。

しかし高齢社会の中で自立した生活が困難な方が増え、それに伴い施設利用やケア付き高齢者住宅に入居する方が増えています。感染に対する抵抗力の弱い高齢の方々が集団生活すれば一度感染が生ずれば流行しやすいことは明らかです。それだけに常に感染情報を入手し、予防を心掛けることが大切なのです。

その考えから化石医師は院長時代には関連するケア施設に感染情報を常に流すようにしておりました。今本邦で、県内で、地域でどんな感染症が流行っているのかを把握すれば予防を強化徹底できます。

ところでノロウイルスに関しては疑問を感じることがあります。ノロウイルス感染の検査はすぐに結果が出ます。従って検査をすれば診断は簡単です。でも検査が健康保険の適用となるのは幼児と65歳以上の高齢者だけなのです。その他の年代では検査は自費になり、検査をすれば治療関係の全てが自己負担になってしまいます。そのためノロウイルス感染を疑っても検査できません。何故保険適用にならないのか疑問が残るところです。

激しい嘔吐と下痢が主症状のノロウイルス感染ですが通常は2、3日で治ります。だからあまり重要視されていないのでしょうか?

でも検査を行いノロウイルス感染だとわかれば、他への感染を防ぐ手だても厳しくできます。施設職員なら感染予防のため出勤を見合わせることもできます。感染症対策で一番大切なことは、正体をはっきりさせ、それに対する手を早く打つことだと化石医師は考えています。そんな化石医師から見ればノロウイルス感染の流行の一因は、検査が保険適用でないことにもあるように思います。

前述のように可能性はあるものの診断が確定しなければ生活指導、規制もあまり厳格にできません。そのために他へ感染拡大する危険は大きくなります。そう考えるとノロウイルス感染の検査は年代を問わず保険適用に改めるべきです。検査にかかる費用よりも、感染が広がった結果に要する治療費の方がはるかに多いと思います。頂いた牡蠣はしっかり加熱料理して食べました。美味しい牡蠣でした。食べた結果も何ともありませんでした。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『新・健康夜咄』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。