私は飛行機に乗るときはほとんどエコノミークラスですが、少々客室乗務員のサービスが悪くてもクレームを言うことはありません。なぜなら、サービスに文句があるなら、お金を出してビジネスクラスやファーストクラスで乗りなさいという暗黙のルールが見えるからです。

同様のことは東京ディズニーランド(TDL)やユニバーサルスタジオジャパン(USJ)でもあります。アトラクションによっては何時間待ちというものも当たり前ですが、エクスプレスパスを買えば、ほとんど待ち時間なしで楽しむことができます。

お金が払えない人は、何時間も待たされますが、私のエコノミーと同様、待ち時間が長くてもクレームを言うことができないのです。クレームがあるなら、お金を出してエクスプレスパスを買ってくださいということを示唆しているわけです。

医療においてはこのような仕組みがないために、外来の待ち時間が長くなるとクレームが出ますし、若い医師が担当になると主治医を代えて欲しい、部屋は窓際でなければ嫌だといった過剰な要求も生まれてきます。

医療の本質的な内容に差別や価格差を生むことには賛成できませんが、周辺のサービスに関しては患者の要求にこたえるシステムを作ったほうが、このような過剰な要求に柔軟に対応できます。

第六に、日本の医療制度の変化に機敏に対応するために、財務分析等を含めた経営に関する知識が求められることが挙げられます。さらに、製薬企業などの営利企業との関わり方を考える上で、経営学の基礎的な理論を学ぶことは企業と共通の用語で理解できるといった点でも有意義です。

私はかならず関連する製薬企業のホームページで決算報告会を動画で見ていますが、貸借対照表(バランスシート:BS)、損益計算書(プロフィットロス:P/L)、自己資本利益率(Return On Equity:ROE)、配当性向などの経営用語の意味を理解できます。

もちろん開発中の薬剤パイプラインや企業の経営戦略を学ぶことで、新薬の情報や今後の臨床研究の方向性を見出すことも可能です。

※本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。