赤字を防ぐためには経営者も社員も人を資産として認識し、全社一丸となって利益目標を達成することが必要です。そのためには誰もが共有できる指標を持つことが大事です。付加価値に近く、よりシンプルに理解できるのは売上総利益(粗利益)です。


売上高から売上原価を差し引いた売上総利益を指標とするのがよいでしょう。社員は自分の給料の何倍の売上総利益を目標に仕事をすればよいのか。一方、経営側は売上総利益を人件費の何倍に設定すべきかを知ることがとても重要です。

 
[図] 売上総利益

松下幸之助氏は次のような言葉を残しています。

皆さんの月給がかりに十万円であれば、十万円の仕事しかしなかったら、会社には何も残らない。そうなれば会社は株主に配当もできないし、国に税金も納められない。だから、自分の今月の働きが、はたしてどのくらいであったかということを、常に自分に問うていく必要がある。

もちろんどの程度の働きが妥当であり、望ましいかということはいちがいにはいえないが、まあ常識的には、十万円の人であれば少なくとも三十万円の働きをしなくてはならないだろうし、願わくば百万円やってほしい。⑬

10万円の給料に対して30万円稼ぐ。松下幸之助氏が説く30万円とは、昔から言われる「給料の3倍稼いで一人前」を表す目安です。社員に3分の1、税金に3分の1、残りの3分の1は企業の成長財源として配分します。

会社を発展させ、社会に貢献し、自らの生活を成り立たせてはじめて仕事にやりがいが生まれるといえます。自分の給料分しか稼げなければ肩身が狭いのではないでしょうか。企業に参画している以上、その発展に寄与し、さらには国の発展に貢献できてこそ、公私ともに充実した生活を送ることができるという考え方は健全です。

給料の2倍を稼ぎ出せば労働分配率は50%となります。50%前後は黒字と赤字の分岐点であり、人件費と諸経費が同額程度であることを意味します。社員が給料の2倍しか稼げないのであれば企業として収支はトントンであり、いわゆる現状維持経営にほかなりません。

このように給料の2倍を稼がなければ企業は赤字に転落してしまいます。さらに松下幸之助氏が唱える給料の3倍目標説は、生活レベルの維持、企業の発展、社会貢献というバランスを考えると、現実的な数字といえます。

ここで売上総利益を目安にしてまとめておきましょう。

給料に対する利益目標
デッドライン/給料の2倍
現実的な目標/給料の3倍
企業ごとの高い目標/給料の3倍以上

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。