こうした方々の胸部のX線写真をじっくり眺めていますと心臓の陰影に重なり、本来そんな場所にあるはずのない空気の影が認められます。その影は胸部のCT検査を行うともっとはっきりします。

なんと胃袋が心臓の裏側に存在するのです。周知のように胃袋はお腹にある臓器です。それが胸まで押し上げられているのは異常事態です。

本来ない場所まで胃袋が押し上げられそこに食べ物が入ったらどうなるでしょう。肋骨で囲まれスペースが限られている場所です。余分な物が入り込めば周囲の臓器が圧迫され異常を感じるのは当たり前です。

ちなみに私の手元にある平均年齢88歳の亀背の方19名を見ますと、9名の方に喘息の病名がついています。肺炎病名がついた方も4名あります。また8名の方に狭心症の病名がついたり疑われていました。

こうした方には通常の逆流性食道炎の治療である酸分泌を抑える薬を使っても、なかなか症状は取れません。腸管の運動を起こりやすくしガスがたまらないようにする治療が有効です。

大学病院で手術する寸前まで行ったYさんもこの治療で何とか10年過ごされています。「手術しなければどうなっても知らないぞ」と大学病院の先生に怒られたようですが、どうやらこのまま生涯を全うされそうです。

Hさんの場合もこの治療が合いました。胸の痛い発作は無くなったのです。5年間Hさんは生活上の異常を示すことはなく、救急車を一度も呼んでいません。この経過を見ればHさんが認知症でないことは明らかです。逆流性食道炎と共に高齢社会の中で認知症は大きな問題となっています。

でもHさんのように私達の観察力不足から作られた認知症も少なからずあります。

そんな間違いをしないよう胃袋ならぬ肝に銘じています。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『新・健康夜咄』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。