時計は11時30分を少し回り、午前中の忙しい時間が過ぎて、昼前の少しヒマな時間帯に入りました。そこであなたは、午前中に扱った書類を整理することにしたのですが、先ほど処理した山崎の通帳の更新に関係する書類に少し違和感を覚えました。

おかしいと思い、内容をよく見ると、申請書類の“サキ”の字が、“﨑”となっています。山崎が書いた申請書や本人確認のためにコピーした免許証の記載を見ると、どれも“﨑”となっているのです。

この時になってやっと、先ほど発行した通帳のおもてに、間違えた“﨑”の字を印字し発行してしまったことに気付きました。

【検討のポイント】

この事例は、行動スリップによるエラーだと考えられます。その原因の1つに、習慣化した動作(作業)は、からだが覚えてしまい、状況が“ズレた”場面でも無意識にそれを行ってしまうということがあります。更に、この時は自分が担当する窓口業務と隣の木村めぐみの新人教育の2つを同時に行ったことも大きな問題です。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『 ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。