それがどうでしょう。今は、キーワードをひとつ入れるだけで国内外問わず、該当する書物をリストアップすることができます。関連本を知りたい場合もあっという間に見つけることができます。しかも国内の書物であれば翌日には手元に届く場合もあります。情報と物流システムの進化は革命的であり、その恩恵は計り知れません。

しかし、ものごとには正と負の面があります。情報化社会の弊害は人々がものごとを深く考えなくなったことです。なかば条件反射的に意見を述べる人が増えているのではないでしょうか。フェイスブック、ツイッター、LINEで起こる数々の事件はそんなネガティブな面が投影されています。“情報裕福・思考貧乏”という現象が起きているのです。

ネットに接続するとわれわれは、とおりいっぺんの読み、注意散漫であわただしい思考、表面的な学習を行うよう、環境によって働きかけられるのだ。(中略)ネットの有する感覚刺激の不協和音は、意識的思考と無意識的思考の両方を短絡させ、深い思考あるいは創造的思考を行うのをさまたげる。⑧⑨

たとえ知識を手にしても、いざそれを行動に移したら事前に想定していたこととは異なる結果を迎え、困ることがよく起こるということを意味しています。そうならないためには時間をかけて知識を自分のものとしなければなりません。

ネット上で展開されている情報の多くは十分な時間をかけずに発信されているため、ものごとの一面しか語っていないことが多いものです。そうした情報だけを頼りにしていては判断を誤る危険性も高くなります。その意味ではネット社会がどれほど進展しても、書物の価値が損なわれることはありません。

知識を得る最後の方法は人の話を聞くことです。人の話から気づきを得て、仕事上の課題や人生の苦境を克服したというケースは多いものです。またメーカーに勤める人間が消費者である他人から製品の問題点を指摘され、その言葉がヒントとなってヒット商品を生み出したという例もよく聞かれます。人から得る情報には無駄がなく、とても貴重なものばかりです。

机上の知識が鍛えられる機会でもあります。また人生を劇的に変えるのも人の話であることが多いのです。誰でも自分の人生に大きな影響を与えた人の話が耳に残っているはずです。ただ、知りたいときに手軽に話を聞けるわけではありません。何らかの縁が必要となりますので、日頃から周囲とのコミュニケーションを密にするよう心がけることが大切です。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。