リハビリとトレーニング

溝口:日本のリハビリテーション分野もアメリカなんかに比べると手薄ですし弱いです。

だから、たとえ名医によって手術がうまくいったとしても、その後のリハビリトレーニングで機能性を向上させていくことがなかなかできません。ですから、特にプロスポーツ選手が手術した場合、その後のリハビリトレーニングに苦労しているようです。機能や痛みの面で術前のような状態、それ以上の状態になった選手はほとんどいないと思います。

まだリハビリをやってくれるところはマシな方。

手術をした後、数回は定期的な検査・診察に来てくださいとは言うものの、具体的なリハビリ内容(指導) を示さないところも少なくありません。リハビリ施設は徐々に増えつつあるものの、元の状態もしくはそれ以上まで持っていくプログラムを組んで、そしてそのプログラムに自信を持ってやっている人(ドクター、理学療法士、スポーツトレーナーなど) は本当に数える程度です。

だから、手術が成功したからといって手放しで喜ぶのではなく、その後のリハビリトレーニングにかかっていると思ってください。

中村:そんなに難しいんですね。

溝口:そうです。経験値が低いということもありますよね。体を大きくしたり、筋肉を鍛えたりするための指導者はそこそこいるんですが、併せてケガをしない体作りや機能回復を図る上級な指導をできる人が少ない。

スポーツ選手も一般の方も「無事是名馬」です。私のところにはプロの選手からアマチュアのトップアスリート、学生まで多くの人が教わりに来ますが、まずは無事是名馬を理解してもらうことから指導します。

インナーマッスルだとか体幹トレーニングだとか言っているようでは、ちゃんとした指導をするのは無理ですね。

私が指導している選手やアスリートを見れば一目瞭然です。筋肉と筋力は違いますが、筋肉と筋力は動作時に必ず神経と絡み合って作用するということを理解していなければ、無事是名馬な選手は作れません。安易な理解だけで実践するのは危ないので、これくらいにしておきますが。

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『ゴッドハンドが語るスポーツと医療』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。