そんな時代からまだわずか40年あまり。そんな短い時間ですが世の中が変わり医療も変わりました。高齢社会の中で病気の治癒がそのまま社会復帰に結びつかなくなってしまったのです。

84歳のYさん。脳梗塞後歩行障害が出現し、一所懸命にリハビリを行っておりました。ところが突然嘔吐が始まり食事摂取ができなくなってしまいました。検査の結果胆囊炎と診断しました。小さな結石が胆囊から総胆管に排出され、それが原因となり胆囊炎が生じたと考え内視鏡的に治療を行いました。

この治療を行うまでの間ひっきりなしに嘔吐が続き、生活はほとんどベッド上となってしまいました。治療により胆嚢炎は治りましたがYさんの歩行機能はリハビリ施行以前の状態に戻り、また一からの出直しです。

98歳のNさん。心臓の働きが悪く腎臓もうまく機能していません。呼吸困難、むくみで何度も入院され、その都度なんとか改善、退院されるのですが、最近は寝ていることが多くなってしまいました。今回は家へは戻れないように感じます。

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Yさん、Nさんの例に限らず肺炎は治ったがそのまま寝たきりになってしまった、などの例は珍しくありません。また脳梗塞は落ち着いたが意識は戻らない。意識はあるが食べることがまったくできない。意識がなく食べることもできず、ただベッドに寝ている。

このような患者さんは当然ながら社会に戻ることはできません。医学部教育で学んだ救命救急医療だけでは対応できない。少なくとも現在の医療ではどんなことを試みても回復が望めない。そんな状態があるのです。

そんな状態になった時どうすれば一番いいのか。その決定は医療従事者でもご家族でもなく、患者さん自身が行うべき問題です。

でも意識のない患者さんは意思表示ができません。現在の医療で治せない状態になった時、自分はどうするか。生前に自分の意思表示をしておくことが必要な時代になったと思います。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『新・健康夜咄』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。