知識を得る3つの方法

人は蓄積した知識を行動に移すことで利益を生み出します。この知識と行動というふたつの要素が駆動力となり企業活動を支えています。優れた知識を備えた社員を多く抱える企業も多いのですが、それだけでは利益を生み出すことはできません。どんなに優秀でも企業内でその知識を行動につなげる術(すべ)を身につけなければ資産にはならないからです。

世間には優秀な頭脳の持ち主は数多く存在しますが、実は自らの知識を行動に変え企業の利益に結びつけることのできる人は意外なほど少ないのではないでしょうか。つまり知識を行動につなげることが何より重要なのです。

では企業にとって利益の源泉となる社員の知識は、どのように獲得されるのかを考えてみたいと思います。

知識の有無によって人の行動には違いが出てきますし、当然、その結果が変わってきます。私たちが行動のよりどころとする知識はどのように得られるのでしょうか。前項では「知識を核とする4つのプロセス」についてご説明しましたが、ここでは、その方法についてお話しします。それは大きく分けて3つあります。

まず体験です。自らの体験を通じて得られた知識は得がたいものです。忘れることもありません。知識が行動を通して確認され、自分にとって確かなものとなります。そうして得た知識はリアルな記憶を伴いますので、他人に振り回されることがありません。人間にとってとても貴重な知識といえます。

しかし体験から得られる知識にはひとつだけ問題があります。それは人間の“生”は有限であり体験の数に限りがあるということです。人生が無限であれば、絶え間なく試行錯誤を繰り返し不動の知識を得ることが可能となりますが、私たちが仕事を通じて得られる体験はそれほど多くはありません。長い人生の中、人生を大きく左右するような体験はそれほど多くはないでしょう。それだけに貴重なものとなるのです。

農業分野での体験を例にとってみましょう。新しい栽培方法にチャレンジしようと種を蒔(ま)き、水をやり、肥料を与えます。ただし収穫までのサイクルが長いため1年に一度しか体験できない場合もあります。試行錯誤を繰り返し、新しい栽培方法を試しながら安定した収穫にたどり着くまでに何十年もかかったという話も耳にします。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。