第2章 未来をつくるのは人の決算書

企業で求められる力とは

次に経費と資産の違いを見ておきましょう。経費は利益を生み出すために必要な費用であり、資産は利益を生み出すことのできる潜在力です。経費は過去の事実であり、資産は未来をつくり上げる実体です。では、その資産の潜在力とはどのようなものでしょうか。

潜在力のある人とは企業にとって将来の利益を生み出せる人です。そのためには次に挙げる能力が必要となります。

・目標達成能力
・量的処理能力
・積極的思考
・責任感
・コスト意識
・優先順位付け能力
・知識、技能
・構想力
・コミュニケーション力
・判断力
・決断力
・指導力

これらを兼ね備えた人が資産、すなわち企業の財産となります。しかし全てを備えた人はほとんどいません。長い時間をかけて一所懸命に努力し獲得する人もいますが、途中で諦めてしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、なかにはこれらの多くを兼ね備えた人がいるものです。そうした人が資産として企業の未来をつくり上げるのです。

これらの能力を身につけた人とそうでない人との差は何でしょうか。それはそれぞれの過去の蓄積によるものです。企業が重要な資産であると認める人は過去に努力をして能力を身につけ、そうでない人は過去に努力をしていません。つまり、企業は個人が過去に身につけた能力を経費化し利益を上げている場合が多いといえるでしょう。

社員は過去に蓄えた知識を行動に移し、それを企業の目的である利益に変えていきます。

知識の獲得プロセスが次の図にあります。それは4つに分かれます。

まず家庭内で両親から得たもの。次に小学校、中学校、高校、大学といった教育機関で学んだもの。そして卒業後、就職先の企業内教育で得られた実践的専門知識。最後に企業外で個人の努力によって得られたもの、この4つです。

[図1]知識の獲得プロセス.jpg

もし、人を資産としてみなさず、 新たな知識の獲得に向けて企業内教育などの投資を行わないときは、社員が過去に蓄積した知識に依存して経営を行うことになります。それぞれが家庭内で受けた教育、学生時代に得た知識に基づき企業活動を行うことになります。これでは過去の資産の食い潰しとなります。激変する社会情勢に対応することはできず、十分に力を発揮するのは容易ではありません。

企業内教育の現状に危機感を持ち、企業外のいろいろな場面で努力を試みた人間が、ほかの社員に比して相対的に優れた能力を発揮し、いわゆる企業をリードしていく人材に育つのです。