「お父さん。道に迷ったの」

いつも大阪へ行くときJR長尾駅を利用するのでもしかしたらと思った。

JR長尾駅は、スーパーと反対方向の東側に当たる。距離は同じくらいだ。バイクでいつも通る道を探しながら長尾駅に着いた。周辺を見たがいなかった。「おかしいなぁ。豊子どこへ行ったんだ」と焦った。警察から電話があるかも知れないと思い、再度自宅に引き返すことにした。

自宅近くの直線道路を自宅まで100メートルくらいに来たとき、地図を見ながら男性と向き合っている妻を見つけた。

「あっ。いた。良かった」と思った。男性に見覚えがあった。ゴルフの友達Kさんだった。「Kさんじゃないの。豊子どうした。心配して随分探したんだ。見つかって良かった」と言うと、「お父さん。道に迷ったの」と言う。

心配顔でバイクに駆け寄ってきた。Kさんが、「棚橋さんの奥さんでしたか。大変失礼しました。私が長尾駅から帰宅途中、奥さんから声を掛けられ、道に迷ったので教えてと言われ自宅に立ち寄り地図でどの辺かと、聞いていたところでした」と言う。

「申し訳ありません。大変迷惑をかけました。ありがとうございました。連れて帰ります」と詫びた。「名前を言ってもらえば、直ぐに分かったのに、私が聞かなかったのが悪かったです。奥さん良かったですね。ご主人に会えて」「ありがとうございました。すみませんでした」と妻も丁寧に頭を下げて礼を言いKさんと別れた。

家が、すぐそこなのでバイクを押しながら妻と二人で歩き出した。「カギを渡すから先に帰って玄関を開けておいて」と先に行かせた。

自宅は、目の前の四つ辻を右に曲がった2軒目だ。ところが妻は右に曲がらず真っ直ぐ通り過ぎた。道に迷った原因は、これだと分かった。

大きい声で、「真っ直ぐじゃない。そこ右に曲がるんや」と指示した。妻は、戻って曲がりやっと自宅にたどり着いた。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。