「紹介状」が開業医をダメにする

溝口:個人病院やクリニックには〝治らない三種の神器〟の他にも伝家の宝刀があります。極端に言うと、それがあるからこういった治療をやってもあぐらをかいていられる。それがあるから技術研鑽しない。それがあるからリスクを背負わない。それがあるから薬、注射、定期的な検査・診察という安易な方法を取る。いったい何だと思いますか?

中村:うーん、ちょっとわかりません。

溝口:伝家の宝刀とは「紹介状」です。この紹介状という存在が個人病院の懐刀になっているんです。単刀直入に申し上げます。〝治らない三種の神器〟の治療をしようと、注射を乱発しようと、薬を乱発しようと、いざとなったら大きな病院へ行ってもらう。そこで何とかしてもらう。そこで何とかしてもらってください。これは間違いなく個人病院の医者の根底にある大手依存意識です。ですから、リスクまで背負って大きな冒険(治療や検査など)をする必要がないんです。これを「保身治療」と言います。

その逆のパターンもあります。これくらいのことで紹介状を書く、もしくはここまで悪化させておいて紹介状を書くのは自分のプライドが許さないというケースです。こういった場合、紹介状を出すタイミングを誤ってしまい、手遅れになってしまうこともあります。ですから「紹介状」に関しては取り扱いが本当に厄介なんです。この伝家の宝刀の取り扱い方も個人病院の医者の能力のうちに入ります。しかし、現状では「保身治療」の隠れ蓑になっている一部だということは否めません。
 

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『ゴッドハンドが語るスポーツと医療』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。