先生は個人病院に対して少し批判的ですよね?

溝口:患者の予後にその差が顕著に出ます。生命にかかわる病気ならなおさらです。たとえば、ガンの5年生存率。乳ガンで言うと、乳ガンのステージがⅢbだった場合。ステージⅢbの5年生存率は約45~50%と言われていますが、このデータは一流の医者からダメな医者をひっくるめてのアベレージ。もし、一流の医者だけを算出すると45~50%だと言われている5年生存率が60~70%以上に跳ね上がるでしょう。逆にダメな医者だけでのアベレージなら20%以下になるかもしれません。その他の病気やケガに関しても同様です。

「あなたならどっちに全幅の信頼を置き、体を預けますか?」ということです。

患者を口で誤魔化すことができても患者の体を誤魔化すことはできません。なぜなら、体は治療に対して正直に反応するからです。先日、うちの患者が乳ガンにかかられたので、私が名医を紹介し手術してもらいました。すこぶる順調です。

中村:そう言われると最初にかかったお医者さんによって、その後の人生(運命)が大きく変わるんですね。

溝口:そりゃあ、大きく変わります。ここなんです、一番大事なことは。私は大手の医者が良くて小さな病院の医者が悪いとか言っているのではなく、医者個人の能力を重視すべきだと患者に伝えたいですね。

中村:お話を伺っていると、先生は個人病院に対して少し批判的ですよね?

溝口:そりゃ、そうです。大手の名医とお話しする機会がありますが、こぞって「ちゃんと治療してくれよな。最悪の状態になってこっちに回してくるもんなあ。きちんと検して治療していればこんなに悪くはなっていないという患者が多すぎる。だからMRI検査などの予約待ちが多くなるんです」と嘆いておられます。

レントゲン検査、痛み止めの薬の処方、湿布、いわゆる〝治らない三種の神器〟だけでは良くなるわけがありません。そして、注射の乱発。患部さえ触って確認してくれないんじゃ、「やりっ放しは何もしないよりまだ悪い」です。それでいて長らく通院させ悪化させてしまう。その後は紹介状を使って大手の病院へというパターン。

中村:そういうお話はよく聞きます。