言葉

朝 目覚めた時
「今日」に目覚めたのか
「昨日」に目覚めたのか
見当がつかないような
寒村での単調な日々に少しだけ慣れ
一種諦めに近い形で
スマホやネットのことを考えなくても
呼吸が続くようになった頃

あまりに二本足の生き物に会わず
時折訪れる野良子猫を除いては
毎日何も起きない日常の中で
ほとんど書かなくなっていた日記とは別に
その日その時々に感じ考えたことを
メモに書き留める習慣が始まった

少し前のメモを時折読み返すと
以前の自分と現在の自分との間に
微妙なベクトルの違いが感じられ
それが寒村で「対話」に枯渇していた
人間には心地よく感じられた

そして
気づいた時には
周辺の自然や音楽の
美しさや魅力を
何とかして言語化するという
試行錯誤に夢中になっていた

これは
何か味気ない哀しい営みのように
思う人もいるかもしれない
なぜなら「美」にせよ「魅力」にせよ
本来ならば
単純に味わい愛でるのが一番いいのに違いないから

だが
自分の中で
それまでの電子デバイスの抜けた空間が
予想以上に大きかったせいか
実際この時期の自分は
次から次へと新しい「美」や「魅力」に巡り合った
そんな中で
いろいろな感覚に敏感すぎるきらいのある自分は
言語化することである程度客体化しておかないと
自分がどうにかなってしまうような気がしたのである

そうして
先に書いた「魅力」の分析などが
あくまで周辺でしかない
中核的な部分に進んでいくことになる……