第一章 注射にしますか、お薬にしますか?

無念! 二刀流でやぶ蚊に敗れたり​

メバルの夜釣りをしていてこんなこともあった。

釣りには、「釣れる時間」と「釣れない時間」がある。釣れる時間を、時合(じあい) 、と言うが、それがいつ来るのか分からない。だから釣り師は、「今か?」「今か?」と気をもみながら、その到来時期を気を抜かないで待っている。

真っ暗で穏やかな初夏の夜だった。絶好のメバル日よりの夜である。

出掛ける時に麦茶を多めに飲み、釣り場の夕食時にビールを飲んだのも響いて下腹が満タンだ。先ほどから小用をと思いながら、なかなかきっかけが掴(つか)めない。もう一投、もう一投と我慢しながら、続けていたが、遂に限界に達し、立ちションと相成(あいな)った。

「釣り師は」こんな時、釣りをしながらの「ながらション」をやる。道糸を多めに出して、場所を二、三歩、移動し、左に竿を持ち、右手の親指と人差し指でズボンの中の短竿を取り出し、首を左に捻(ひね)って電気ウキを見ながらの二刀流の「ながらション」である。

その時、電気ウキがスーッと消し込んだ。立ションしながら左手だけで合わせると、グッと手許に重量感が伝わる、ここが釣りのいいところ「大谷翔平もどきの二刀流」、竿をゆっくりと立てる。早く浮かせて寄せないと、メバルは海草に絡んだり、岩の下に潜(もぐ)ったりする。

股ぐらの短竿を持つ右手指を離しリールを巻く。

いいねー、この感じ!
何とも言えぬ釣りのだいご味!

その時、ズボンから出したままのチンコの先が「チクーッ」