したがって、各専門職は病院に帰属しているという意識よりも、各専門職の集団に属しているという意識が高いと言えます(これを準拠集団といいます)。特に、従来医師の人事は大学医局によって決まることが多く、勤務病院に対する医師の帰属意識は他の職種と比べると低い点は否めません。

このような多職種の異なった価値観、規範、慣習を統合しなければなりません。病院とは、非常に多くの職種が複合的に合わさってできた組織であり、これらの関係に機能的な連携が成り立つことが、組織の成果の是非や可否を決定する最大の要因です[※2]。

多種の専門職の存在は目標の多様性を生み、マネジメントの困難性に繋がります。すなわち、組織の目標と専門職の目標の不一致を起こしたり、部門間のコンフリクト(対立)が生じやすいのです。

3.  2つの競争が存在する

医療においては、医療政策や診療報酬改定にいかに適応するかといった制度適合競争と、地域や、患者のニーズにいかにこたえるかといった市場適合競争との2つの競争が存在し、一般企業経営よりも、制度適合競争の影響が強いことが経営の困難性の背景にあります。

制度適合競争では、年々変化する制度や仕組みに対応するため長期のビジョンを持てなくなり、短期的視点に陥ります。医療経営のセミナーというと診療報酬や包括支払制度(DPC/PDPS)など制度適合競争に打ち勝つための戦術をテーマとしたものが多く見られます。本書が目指す医療経営学は時代や制度が変わっても通用する普遍的な理論や考え方です。

※本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。