2007年

素肌の上にYシャツを

四月後半の今週は素晴らしい春の陽気の日が続いた一週間であった。朝晩は肌寒く感ずるときもあるが、日中は二十度を超え、爽やかな風と雲ひとつない青空は本当に気持ちよく、オフィスで仕事などしたくなくなってしまう。

さてフランスに来て「う〜ん、日本と違うなあ」と感じたことがある。
それは「フランスはトイレが冷たい」ことだ。別にトイレが凍っているのではなく、便座カバーがないせいだ。

特に冬は冷たい便座に座るにはエイッと気合をいれないと座れない。

ことトイレに関しては日本のトイレの近代化は世界最先端を行くのではないかと思う。
温水洗浄便座がどの家庭にも普及し、中にはリモコンで便座が開くものもあるなどというのはフランス人には信じられないのではないだろうか。

公共のトイレ事情についても同じで、フランスでは外に出たらトイレを探すのが一苦労である。

公共のトイレは日本も決して誇れる清潔度ではないが、フランスでは公共のトイレ自体が少なく、かつ、お世辞にもきれいとはいえない。街中ではカフェに入ってコーヒーをたのみ、ついでにトイレに入るというのが最も確実な方法である。

そんなフランスには便座カバーなるものがそもそも存在しない。スーパーで探してもない。
仕方なく日本から送ってもらったのだが、サイズが合わない。そこで一時帰国の際にホームセンターでサイズフリーの接着式のものを購入しそれを使っている。

フランス人と結婚した日本人のマキさんにその辺の事情を聞くと「フランス人が便座カバーのついたトイレに入ると逆に気持ち悪がるのではないかと思いますよ」という答え。

フランスに来たらトイレには要注意である。

さてすっかり気候がよくなり薄着になる季節である。そろそろ冬物をクリーニングに出そうかなあと思う今日この頃だが、フランスでは冬物、夏物というような概念があまりないようだ。

もちろん冬はコート、マフラー、夏はタンクトップ、短パンスタイルで季節によって当然異なるが、日本の衣替えのような季節の変わり目を国民的に意識する風習はない。

四月下旬の今、街を歩いていてもコートにマフラーという冬スタイルもいれば、ノースリーブ、Tシャツの夏スタイルもいて、各自が思い思いのスタイルで歩いている。

ファッションの国フランスの街中を歩いていて気がつくのが、ブティック、靴店、メガネ店、女性下着店、そして美容院(理髪店)などの店の多さである。頭から足の先まで、外側だけでなく内側まで気を配るというのがフランス人のおしゃれ感覚なのだろう。

スーパーに買い物に行ったあるとき、男性衣料品売り場をカートを押しながらながめていてふと気がついたことがある。下着のパンツのコーナーはとても広いスペースが取ってあり、カラフルな色、デザインも様々で「う〜んフランス人男性は下着にも凝るのか」と思ったのであった。

一方下着のシャツのコーナーはとても小さく、パンツ対シャツの売り場の面積比は八対二または九対一というほど男性の場合はパンツの割合が多い。

そうなのだ。フランス人男性で下着のシャツを着るのは少数派なのである。着る場合も冬場の防寒着としてだけのようだ。つまり素肌の上にYシャツを着る。

昔見たフランス映画で、アラン・ドロンなどが素肌の上に白いYシャツをさっと着るというシーンがよくあった。あれはなかなかに格好良く、アラン・ドロンがランニングシャツの上にYシャツというのでは絵にならない。

でもこれは決して映画の世界だけでなく日常のようである。
先述のマキさんに再び聞くと「うちのダンナも下着のシャツは着ないですよ」という。

私などは素肌の上にYシャツというのはどうも落ち着かない。これはおしゃれ感覚の違いだろうか。私には湿度の差による違いと思える。

フランスは日本と比べて夏の湿度は低く、汗を吸い取るという下着の役割は必要性が低い。だからシャツには冬場
の保温の役割しか与えられない。

このように思うのではあるが、フランスに来ても依然として下着のシャツを着けないというのは馴染めない。これは習性だからか。

では女性の場合はどうなのかという疑問が当然わく。興味のある?テーマではあるが、むやみに女性下着売り場を歩くわけにもいかず、まして会社のフランス人女性に尋ねるのもはばかられる。

従って、残念ながらよくわからないというのが実情である。

※本記事は、2018年10月刊行の書籍『ブルターニュ残照』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。