いいえ、先にも述べましたが、人は最善の結果を得るように行動します。簡単にエラーが発生することはありません。

脳は外部からの情報に対して、瞬時に物事を判断し正しい答えを出します。そう簡単にはエラーは起こらないのです。

しかし、脳がダメージを受け疲れてくると、その処理能力や計算力は次第に低下します。ついには、限られた時間内に正しい答えを出せない状態にまで低下するのです。

人の活動は、通常停止するわけにはいきません。判断を下すべきその瞬間においては、いくら疲れていても、判断を遅らせるわけにはゆかないのです。

たとえ脳の中で思考の一部が未処理の状態であっても、人は一応の判断を下します。処理できなかった場所が、人間の情報処理モデルの①~⑥の何れであっても同じです。

脳内で処理しきれずに取ったとっさの行動が適切なものであれば良いのですが、時に取った行動が原因となり、活動の結果に不具合が生じることがあるのです。そしてこれらの活動結果の不具合のことを、人は“ヒューマンエラー”と呼びます。

つまり、“脳が疲れていたため、所定の時間内に一部の処理や判断を完了することができなかった”もしくは“疲れが原因で発生する誤った出力”それがヒューマンエラーです。脳の疲れがある一線を越えたとき、すなわち脳内の情報処理が制限時間内に完結しなくなったとき、ヒューマンエラーの発生頻度が高まります。

それでは、この“ヒューマンエラー”と“事故”とはどのような関係にあるのでしょうか。私達が最終的に防止したいと考えているのは、ヒューマンエラーが発端となって発生するところの“事故”です。ヒューマンエラーがどのように事故に関わっていくのか、次はヒューマンエラーと事故との関係を考えます。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『 ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。