第1章 ヒューマンエラーはなぜ起こる

2、m-SHEL モデル

2-2.なぜ脳は間違いを犯すのか

先に「何が人の脳に間違いを起こさせるのか。その疑問を解くヒントとなるのが、ヒューマンエラーの発生を視覚的に示した“m-SHELモデル”です」と述べました。更に、外部から受ける“悪い影響”が、人の脳に間違いを起こさせるとも述べました。

ここからは、m-SHELモデルと悪い影響の関係をお話しします。

人は普段からm-SHELモデルで示した4つの要素に取り囲まれて活動をしています。先に示したように、普段の生活の中でも、これら要素とその中心で活動する人との噛み合わせが変動して、時にうまく噛み合わない状況が発生します。その原因は、前に述べた通り、周囲の要素にある場合や、中心の人にある場合など、様々です。

m-SHELモデルにおいて、L-S、L-H、L-E、L-Lの関係の噛み合いが悪くなり、それらの間に隙間が生じた時、そこに発生するのが不整合です。この不整合という状態が、中心に位置する人に対して、悪い影響を及ぼす何かを生じさせるのです。

その何かとは“違和感”であったり、“疲労”であったり、“悲しさ”、“怒り”、“悲しみ”、“疎外感”、“脱力感”などなど、あらゆる状態、感情、状況が考えられます。そして、これらの“悪い影響を及ぼす何か”(本書では「マイナスの要因」と呼ぶことにします)が、人の脳にダメージを与えるのです。そして、そのダメージが人にヒューマンエラーを起こさせる原因になります。

人と各要素との間に“マイナスの要因”が存在すると、常にヒューマンエラーが発生するのでしょうか。