オイラには「白さん」という釣友がおる。

彼はオイラより一〇歳も若く、釣りも上手い。特筆すべきは力持ちである。

確か四月頃だった。四国・宇和島へグレ釣りに行った。夜、時間を持て余し、近くの堤防でメバルを狙うことにした。まだ肌寒く、夜だから防寒具を着ていた。ところがオイラ一人が暑く感じたのかどうか分からぬが、一人海に飛び込んだのである。

彼が言うには、堤防から足を踏み外し、「ドボーン」と転落したそうである。無論近くにいた彼が、引き上げてくれた。

正確には、オイラの首根っこを後ろから掴み、堤防の上へ「ポン」と乱暴に放り投げたのである。

それから、車のヘッドライトの前に立たせ、嫌がるボクを裸にし、トンガラシほどにして震えているのを車の中のボロに包み、釣り宿に持って帰ったのだ。

釣宿では連絡を受けていた釣友の「コバちゃん」が風呂を沸(わ)かし、待っていてくれた。

コバちゃんと白さんはまるで赤子のおしめを代える時のように優しかったが、不思議なことに、二人とも人生で最も嬉しく楽しい時間を迎えたようにはしゃいでいた。

諸君! 夜間水泳で身体が冷えた後は風呂に限るゾ!

こういう時もなんだ、オイラはまあ、主役と言うか、常にエンターテイナーだったのである。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『お色気釣随筆 色は匂えど釣りぬるを』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。