翔一は、「あ、そーですか、わかりました」と言って受話器をもどし、オンフックモニターのボタンを押して、新二が持っているポケットベルのナンバーをコールした。

「こちらはポケットベルです。メッセージを入れ、最後にシャープを2回押してください」

何度聞いても、全く変わり映えしない電子音声が一気にしゃべる。翔一は、自宅電話のナンバーを打ち込み、シャープを2回押してモニターをオフにした。そうしておいてから、お店に出る用意に取り掛かる。

服を着終わる頃、電話が鳴った。『新二だな』そう思って受話器を取り上げた。

「もしもし、翔ちゃんおはよう、ベルは、何?」

やはり、新二だった。

「オーダーの数だけどさ、今のところ250グラムだっつーことと、GETの予定は何時頃かなぁと、思ってさ」
「今夜中には確実なんだけど、まだ時間までは解らない。早ければ今夜中に渡せるし、遅くなったら朝方になるかもしれない。どっちにしても今夜中にはOKでしょう」

新二はそんな予測を立てた。

「OK、さすがに早いね。それで今回の引き値は、いくらなの?」

翔一が、訊くと新二は「グラム1000円」と答えた。引き取りの額を確認した翔一は

「今回のは、全部2500円で出したからね」

新二は、それを聞いて即座に数字を頭ではじく。

「OKそれじゃあ、250グラム×2500円で62万5000円。引き値の50万円差し引いての12万5000円は、折半でいいよね。とりあえず」

500グラム仕入れて、そこから250グラムが、今夜中にさばける。手元に残るのが、250グラム。残ったもの全てと、引き値(元値)を差し引いた数字、12万5000円、これらが2人の浮き、つまり儲けとなる。

「じゃあこっちは、今夜中に集金を済ませておくからGETした時点で連絡して、今夜からまた車でお店に行くから、深夜でも動けるからね」
「えっ、直ったの? 翔ちゃんのフィアット」
「うん、さっき車屋から電話があってね、今から取りに行こうと思ってるんだ」
「よかったね、これで嫌いな電車に乗らなくて済むんだね」

新二は、翔一の電車嫌いをよく知っている。

「電車はさぁ、コンディションが一定じゃないし、人でいっぱいだしまいっちゃうよね」

翔一は、ほんとに電車が嫌いならしい、他にも理由はありそうだが。

「そうなんだ、じゃあそういうことで、あとで連絡します」

そう言って、新二は電話を切った。支度が済んだ翔一は、嬉しそうに部屋を出た。

※本記事は、2017年9月刊行の書籍『DJ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。