第1章 ヒューマンエラーはなぜ起こる

2、m-SHEL モデル

2-1.m-SHEL モデル

〈m-SHEL条件の揃った理想的な職場例〉

①普段行う作業の手順は明確に決められており、それが“マニュアル”という形で文書化されている。各就業者への教育も必ず実施することがルール化されているため、始めての作業でも実際に始める前には何をどうすれば良いのかが理解できている。始めての作業でよく感じる“憂鬱感”や“過度の不安感”はなく、それよりも作業がうまく進むことの“期待感”があり、やる気アップにもつながっている。

製品仕様の変更時、必要性があればマニュアルの改訂が行われる。そんなマニュアルは、図や写真を用いて分かりやすく説明されていて、作業性についても充分検討されていることは想像に容易い。

マニュアルのコピーは現場にも配付されていて、改訂時には全てのコピーが直ぐに最新版に差し替えられる。過去には、最新版と旧版が混在したり、マニュアル変更時の周知不足が原因してトラブルが何度か発生した。“変更管理”の重要性が認識されるようになり、差し替えのルールも徹底されるようになってからは、そのようなトラブルは発生しなくなった。

作業は内容に見合ったスケジュールが立てられていて、完了までの流れが分かる。そのため、トラブル発生や計画通りに進まないと判断された時点で、直ちに適切なレベルのフォローを行うことができる。

何よりも、イレギュラーな残業や長時間の残業がなくなったことで、アフターファイブの計画が組みやすく、プライベートでも充実した時間を送れている。(Software)

②作業に使用する機器や道具は、全て適切なものが取り揃えられている。例えば測定に用いる機器は、現場の変動範囲を充分カバーするもので、かつその機器の測定可能範囲は大きすぎることもなく、常に正確な数値の把握が可能だ。

以前の話だが、測定可能幅が現場の変動範囲の数十倍もある機器で測定していたことがあった。その時は、振れ幅が小さすぎて、正しい数値を把握するのにしばし“にらめっこ”が必要であった。今は読み取りミスもなく、操業の安定化にも貢献している。