第一章 変わりゆく妻の異変に気付く

二、包丁がない…夫のせいにする

2012年春の出来事だった。早朝、妻が台所で引き出しや扉を開けたり閉めたりしていた。

2階から下りてきた私は、
「何を探してるの?」と聞いた。

「包丁がないの。探してるの」
と言う。包丁入れを確認すると確かになかった。

昨夜は、玉葱を切っていた。

「昨日あったのにおかしいね。一緒に探そう」
と協力した。二人で押し入れや戸棚、思い当たる場所を探したがどこにもなかった。

「おかしいな? どこに、行ったんだろう?」
と互いに不思議に思った。まさかと思ったが、冷蔵庫の扉を順番に開けて冷凍庫を見た。そこに凍り付いた包丁が横たわっていた。

「こんなところにあったよ。お前入れたの?」
と言うと、
「私そんなところに入れた覚えはないわ。私じゃない」
と強く否定した。


「じゃあ、誰が入れたん?」
「お父さんが、入れたんと違う」
と言う。

「お父さんは、包丁なんか使わないやろ、こんなところに入れるはずはないだろう」
と語気を強めて言い返した。

「私は知りません。入れてません」
の繰り返しで涙ぐんで強く言い張った。

ムカッとしたが些細なことで、朝から喧嘩することもないと思い、気持ちを抑えて、
「探して出てきたんだから良かったよ。お湯で溶かそう」
と優しく言い、給湯器のお湯をかけて元に戻した。