第Ⅰ部 医療経営戦略

第1章 経営学とは?

本章のポイント

・経営学とは利益の追求ではなく、すべてのステークホルダーを幸福にするための手段であり、医学と同様に「人とは何か」 を探求する学問です。
・医療経営が困難な理由は病院がヒューマンサービス組織であること、多種の専門職を扱うこと、市場競争のみでなく医療制度への適応が求められる点などが挙げられます。
・病院経営には部分最適ではなく、全体最適の視点を持った医療者の養成が不可欠です。

臨床医学と経営学の共通点

医療専門職は理系出身者が多いせいか、経営学といった言葉そのものにアレルギーをお持ちの方も多いと思います。しかし、実際には臨床医学と経営学には多くの共通点があります。

内科や外科などの臨床医学は単独で成立している学問ではなく、解剖学、生理学、病理学、薬理学などの基礎医学を発展応用し、医療へ実用化した学問であり、治療対象は“疾患”です。

一方、経営学も社会学、経済学、法学、心理学などの学問を礎にし、治療対象は企業や病院などの“組織”です。したがって、臨床医学と経営学にはさまざまな学問を統合的に考察し、問題点を治療するという共通点があります(図1)。

[図1]臨床医学と経営学の共通点

さまざまな基礎医学を統合して臨床医学を考察できる医療者には、経営学的な思考は比較的容易な学びです。さらに、経営学=財務と考え、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表のことばかりに囚われているのではないかといった誤解があります。

しかし、臨床医学も経営学も、あくまで疾患で悩む、あるいは組織の内で悩む“人”を対象とした学問です。

したがって、コンサルタントなどの医療現場を理解していない経営専門家に経営を任せるのではなく、現場で働く医療者自身が医療経営学をリードすべきだと考えています。

さらに、コンサルタントが提供するのはあくまで経営術であって、アカデミックな経営学ではありません。