Chapter 2 生存への道

四人は勝手口に移動し、箱を一つずつ開けた。一つ目には粉ミルクや子ども服など、ベビー用品が詰まっていた。嬬恋村のおじいちゃんおばあちゃんが、遠く離れて暮らす孫に届けるつもりだったのだろう。

二つ目は果物。巨峰がわんさと詰まっていた。これは早めに食べなければ傷んでしまう。

三つ目にはインクカートリッジが詰まっていた。かなりの量である。送り主がこの施設になっているところを見ると、さては係員が誤発注を掛けて、返品するつもりだったらしい。

紙が一枚入っていて「この度は失礼しました云々」と書かれている。「おおかた、ゼロを一個多く押し間違ったんだろ」盛江はせせら笑い、箱を動かしたが、かなりの重さに息を詰まらせた。

その後、四人は施設の中をもう一度回り、使える物と使えない物を選り分けた。使えないからといって捨てるわけではない。考えようによっては使える物になるかもしれないからだ。

それが済むと、ロビーのソファを動かし、五十人超が一斉避難した場合のスペースを確保した。ソファはドアのすぐ横の壁に立て掛けた。

ガラスが無くなった部分を塞ぐ蓋の役目をする。ソファの背をはめ込んで、後ろからモップの柄をうまくかませると、ドアもソファもびくともしない。早坂と盛江はなんども組み上げて強度を確かめた。ふと外に目をやると、空は夕焼け模様だった。

林は何気なく施設の壁掛けのデジタル時計に目をやった。

《23:31》

「早坂君、ここの時計って、確か電波時計だったよね」
「そうだ」
「夕焼け具合からすると、今は夕方の十六時くらいのはずだと思うんだけど、時刻があまりに違い過ぎない?」
「どれどれ……あッ!」

早坂は時計を見て目を丸くした。