ブラック企業という何ともネガティブで暗い言葉で企業を一方的に評価することに疑問も感じますが、時代の変化を読みとることができなかった企業にはやはり問題があるといわざるを得ません。

管理職にとっても若者にとっても自分たちの将来像がまったくつかめず、バブル崩壊後の20年は日々漂流を余儀なくされ続けてきたのではないでしょうか。

しかし、ここで多くの人が忘れていることがあります。

誰もが口を揃えて未来に希望が持てないと言いますが、どうも未来は誰かにあてがわれるものだと考えている節があるような気がします。

新興国のようにインフラが未整備で、日用品にもこと欠くぐらい慢性的にものが不足し、つくればつくるだけ売れる時代であったなら、わかりやすい夢を獲得でき、明日に向かってまっしぐらに走ることができます。

企業の海外進出先が中国からASEAN諸国にシフトしていく中、私は企業経営の経験者と共同で、将来のASEANと日本の真の交流を目的に、 ASEAN各国から国費で派遣されている留学生のサポートをしています。

彼らの目の輝きや、やる気にあふれる姿に接しますと、貧しい中でも豊かな夢を手にしていることにうらやましさを感じます。

そうした発展途上の国の若者に比べ、残念ながら私たちはすでに豊かです。その分ものを買うときには慎重に吟味しますし、こだわりも出てきます。

そんな複雑な時代に、豊かな生活をしたい、親孝行をしたい、海外に雄飛したいといった素朴な願い、つまり20世紀型の夢を期待するのは無理な話です。そのことを理解したうえで未来を語らなければいけません。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。