そのクラスには二人の番長がいた。

一人は海原という相撲自慢の奴で、もう一人が正であった。体格に抜きん出た正はスポーツも遊びも人一倍で、その上、喧嘩はめっぽう強い。が、勉強は今ひとつ……という、番長としての三拍子を揃えたような男であった。

(“番長”なるものは勉強のできる優等生じゃダメ! という定義……?! )

対し、苛められるのに慣れている私は、そんな威圧に怯む事はなく、それが一層生意気に見えたのだ。

しかも私は、ウドの大木のように図体だけはでかいので特に苛め甲斐があるらしく、休み時間のたびに何かしらのチョッカイを出してくる。

苛めそれ自体より理屈の通らない理不尽が大嫌いな私は、家に帰るなり母を愚痴の聞き役にさせるのが常であった。

(最近は“言えない”“聞けない”という親子が増えているらしいが、それはいけない。子供は親に心配かけるのを遠慮なんかしちゃだめなんだ……。と、私は思う。)

そんなある日の昼休み、不意に、教室の後ろのドアがガラリと開き、

「おめたち何やってんだ……。うちのアキこと寄ってたかってやりやがって、そんなにうちの子が憎いのか!」

と、仁王立ちの母が一喝した。

そして、うむも言わさず、苛めっ子二人の首根っこを掴み、あとの数人に「おめらも来い!」と、校長室へ連れていった。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『ありがとうをもう一度』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。