第1章  夫婦の問題

(9)夫婦生活を脅かす心身のストレス

▼ストレスが勃起や健康障害を引き起こす

ここまで幾度か述べておりますストレスについて、本項であらためてお話ししたいと思います。

それは、ストレスが本人だけの精神的かつ身体的な不調にとどまらず、常にパートナーとの精神的・身体的な交流と密に関わっているからです。そして、ぜひ理解して欲しいのはストレスが腸内環境と呼ばれる極めて大事なお腹(腸)のいわば健康状態や勃起と表裏一体になっていることです。

イライラや不安などの精神的なストレスだけで、驚かれるかもしれませんが、実は腸の働きそのものを悪くさせて、なんと身体全体の機能に悪影響を及ぼし、個人を不健康におとしめてしまいます。

夫婦を含め対人関係の単なるストレスが原因で、たとえば寝付けなかったり、食欲がなくなったりすることは皆様も経験があると思います。

逆に食べ過ぎ、運動不足や夜更かしなどの不健康な生活態度そのものが、毎日の生活にイライラや不安などのストレスを招き、特に夫婦間にいさかいの種を持ち込みます。パートナーに対して苛立ち、不信感などや、さらにすすめば無関心、拒絶といった不協和音が生じ、セックスレスになるのです。

不健康な生活習慣に加えて、精神的なストレスでも、不眠、冷え、うつ症状に勃起障害だって起こり、やがては全身の健康を損なうことになるのです。これが生活習慣病であり、肥満、高血圧、糖尿病、さらにはがんなどの病気につながっています。がんも生活習慣病のひとつであることをお忘れなく。

また、うつ病の発症や認知症で現れる記憶、学習、判断などの知的な能力(認知機能)の低下も精神的なストレスや悪しき生活習慣のストレスが引き金になっています。

ストレスの機序説明はいたって簡単です。ストレスとは、2種類ある自律神経のうちの交感神経の活性が異常に長く続いて、もうひとつの副交感神経の作用を抑えている状態です(図1参照)。

[図1]自律神経の交感神経と副交感神経
自律神経の副交感神経と交感神経はシーソーのように連動しながら日常生活活動を調節します。 副交感神経は、安静・睡眠・排便やペニスに作用して勃起にも必要です。ストレスが続くと、コントロール不調で交感神経が優位になり、副交感神経の働きが障害されてイライラ・不眠・便秘・ 勃起障害などを引き起こします。

後者の副交感神経が癒しと安らぎのリラックスモードを促して、安静や睡眠を手助けしています。血管を広げて血液の流れをスムーズにし、身体を温めて、免疫力を高めます。そしてペニスに作用して大切な勃起を促し、便通を促進する機能を司っているのです。

便通を促進するとは、胃と大腸の間にある約6メートルにおよぶ長い小腸のリズミカルな動き(ぜん動運動といいます)を促すことです。