ドイツの道場では、女性は幅二・五四センチ、男性は幅三・八一センチの松材の板を割る。アメリカでは、三・八一センチ幅の木の板が利用できないため、板幅は二・五四センチのみとされている。

また、上達していくにつれて、生徒は板を何枚も重ねて技を実践したり、コンクリート、レンガ、岩石などよりハードな素材を使って試割りをしたりする事ができる。通常、黒帯に昇格した生徒は、撃破のデモ ンストレーションで実践する技と、それに用いる素材のタイプと数を自ら選ぶことができる。

よりハードな素材や複数の物を一度に割る場合、生徒は自身の“道具(TOOL)”をまず調整しなくてはならない。つまり、怪我のリスクを最小限に抑えるため、日頃から各部位の鍛錬が重要となる。

撃破の成功には十分な準備が必要であり、例えば、技の練習や巻藁でのコンディショニング・トレーニングを通じた体力づくりが重要である。またその成功には、心と精神の鍛錬も必要とされる。

なぜなら体、心、精神の三つが調和されて初めて、撃破を成功させることができるからだ。そのためには、撃破の習得に必要な基礎を築き上げることに一身を捧げ、忍耐強くなければならない。

マスターが岩石を割るシーンは見る者を魅了する。しかし本当に素晴らしいのは、この偉業を成し遂げるために実践してきた長年のトレーニングと、テコンドーに対する献身的姿勢である。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『人の道 伝統的テコンドーの解釈』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。