心房細動に伴う脳塞栓症の抗凝固療法

血栓は、主にフィブリン(線維素)という成分と血小板からできています。フィブリンが主体のフィブリン血栓は、心臓弁膜症や心房細動(不整脈)がある人に発生しやすく、心原性脳塞栓症の原因となります。

抗凝固療法は、薬を使って、このフィブリンの働きを抑制して、心原性脳塞栓症の再発を予防しようという治療法です。急性期にはヘパリンという点滴薬が用いられます。

ヘパリンには、急性期の詰まりかかった血管が完全に塞がってしまうのを防いだり、血栓が大きくなって梗塞部位が広がったりするのを防ぐ効果があります。1~2週間経って病状が安定してきたら、内服薬のワルファリンに切り替えます。

この薬は、血液を固める凝固因子に直接作用するのではなく、凝固因子の生成を促すビタミンKの働きを抑えます。納豆などビタミンKを多く含む食品をとると効果が減退し、効きすぎると出血しやすくなることがあります。

ワルファリンは、退院後も再発防止のために飲み続けることが多いのですが、薬の服用を続ける場合は、定期的に検査を受けて効果や副作用の出現をチェックしなければなりません。最近は非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)とよばれる新しい薬も次々と登場しています(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)。

非弁膜症性心房細動治療( 薬物) ガイドラインでは、「CHADS2スコア」(図1)が2点以上の場合には、NOACまたはワルファリンによる抗凝固療法が推奨されています。

[図1]CHADS2スコア
※本記事は、2020年1月刊行の書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法 』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。