第4章 脳梗塞の治療いろいろ

血栓の形態

白色血栓、赤色血栓、混合血栓などがあります。白色血栓は血管に傷が生じたその場所ででき、フィブリンに絡まった血小板の凝集が主体になっていて、顕微鏡で見ると白っぽく見えます。心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こします。

赤色血栓は、管が狭くなったり閉塞したりすることで血流が滞った場所にできます。赤色血栓は、血小板、赤血球、白血球からなり、赤血球がフィブリンの中に多く取り込まれるため赤く見えます。主に静脈系で発症し、血液凝固の関与が大きいとされます。下肢の深部静脈血栓症が代表的です。

混合血栓は白色血栓、赤色血栓両方が混在しており、高脂血症などに多くみられます。

脳細胞を保護する療法

脳に血液が届きにくくなる脳虚血の状態では、傷害された脳細胞や脳血管からさらに脳細胞を傷つける物質が多く作られ、より多くの脳細胞が死んでしまいます。この悪い物質の1つである「フリーラジカル」(活性酸素)から脳を守る薬として、脳保護剤(フリーラジカルスカベンジャー)であるエダラボン(商品名:ラジカット)(注射液・注射剤)が日本で開発され、脳梗塞急性期の治療薬として広く用いられています。

脳梗塞にはいろいろなタイプがありますが、エダラボンは、すべての脳梗塞に用いることができます。1日2回の点滴投与ですが、単独で使用しても効果があることが証明されています。エダラボンは、一般に発症後24時間以内であれば使うことができますが、発症後3時間以内であれば、特に高い効果があります。

ただし、脱水、高度の意識障害、感染症を併発しているような方にエダラボンを使用する場合は、腎障害、肝障害、血液障害などの副作用に注意する必要があります。その他、心疾患のある患者さん、高齢者には、慎重投与とされています。

現在、脳に発生したフリーラジカルの量を簡単に計測する方法が研究されています。これが可能になれば、エダラボンの使用量を患者さんに合わせて決めることができ、より高い治療効果を得られると期待されています。