脈を取ったり、胸を開かせ、トントン。

「横になってお腹を出しなさい」と婦長さん。

朕茂センセイは、おへその上を撫でて、キュー●ーさんの割れ目に、チョコンと青い数珠玉の実を挟んだのである。

「注射にしますか、お薬にしますか?」

「おくすり」と言われると、化粧水の空き瓶に入れた水を、上からパッパッと振りかけた。

患者は「キャッ」と飛び上がったが、朕茂センセイは動ずることなく、この治療法を続けたのである。

万一「注射」と言われても、当時まだほんの「小粒のラッキョ」ほどであったから、レディたちのご要望には応えられなかった。そんな訳でドクター朕茂は、まことに品行方正なセンセイだったのである。

終いには、婦長さんまで診察を申し出たから、院長先生というものは昔から多忙だったのであるナ。

ところで、オイラが敬愛する今は亡き文豪安部譲二は、幼少の頃、南天の実を割れ目に挟んだと、その著書に書いておられる。

かわいいキュー●ーさんの白い丘には断然赤が似合う。

青い数珠玉の実はお日様の光を反射してきらきらと光るのだが、学識不足のせいか、赤い南天の実は思いつかなかったのである。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『お色気釣随筆 色は匂えど釣りぬるを』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。